ソシオエステティック

ソシオエステティックとは

ソシオエステティックとは、人道的・福祉的観点から精神的・肉体的・社会的な困難を抱えている人に対し、医療や福祉の知識に基づいて行う総合的なエステティックです。エステティックの施術によって人を癒し、励まし、QOL(生活の質)の向上に寄与し、その人が本来の自分を取り戻すために支援することを目的としています。

闘病生活を送っている方、介護を受けている方、高齢者の方、あるいは社会的苦境にある方へ、医療機関や社会福祉施設の専門家チームと協力しながら医療や福祉に関する知識に基いてケアを行います。
多職種連携により、被施術者の身体的、心理的、社会的な問題、及び家族も含めた複雑なニーズにより良い対応を目指し、それによりQOLの向上に寄与します。

ソシオエステティシャンは、医療機関や社会福祉施設等さまざまな機関・施設で活動しています。

ひとりの女性の心で芽生えた想いが、エステティックをやさしく変えていきました。

CODES の紹介

ルネ・ルジェールは、エステティックの資格を取得し、1950年に、トゥールでエステティックサロンをオープン。
そこでの体験が、彼女のその後の人生を大きく変えました。

エステティックが、決して表面だけを美しくするものではなく、心の奥深くの悲しみや悩みを癒やすことができるものであると、多くの人々への施術を通じて確信しました。
やがて、裕福で健康な人々だけではなく、病気の人や心の病を抱えた人、社会的な弱者にまでエステティックのよろこびを伝えたいと願うようになった彼女は、エステティックの知識だけではなく、より深い医学的な理解が必要であると痛感し、国立トゥール医科大学ブルトノー病院の門を叩きました。

その後、精神科病棟や刑務所、老人ホームなどでボランティア活動を開始、1978年、トゥール医科大学ブルトノー病院内にCODES※(コデス)を開設。
1997年には国から「ソシオエステティック能力資格」の資格名で、技術教育資格として認可され※、CODESの教育機関が国家から認められるまでになりました。

CODESの紹介

彼女の精力的な活動とともに、ソシオエステティックの重要性が認知され、フランスでは、医療や福祉の分野で重要な役割を担う存在としてしっかりと根付いています。またフランス以外の多くの国々でソシオエステティシャンが活躍しており、フランスでは毎年国際会議が開催され、世界中のソシオエステティシャンが一堂に会し、様々な取り組みや成果について発表を行っています。日本からも多くのソシオエステティシャンが参加し、日本の現状について発表をしています。

フランスでの活動

ソシオエステティック発祥のフランスでは病院や老健施設だけでなく、刑務所や難民センター、DVシェルターなど幅広い分野でソシオエステティシャンが活動しています。施設から報酬をいただく場合もありますが、多くは助成金を申請して活動をしています。ソシオエステティシャンの活動に対し支援する母団体があることが大きな支えになっています。

AIDS患者向け施設とソシオエステティックについて

施設での活動の一例を紹介します。フランス南部、カルパントラにあるメゾンドヴィ(生命の家)はAIDS患者の方が、身体と心の休息を得ることができる施設です。女優グレースケリーの次女あるステファニー・モナコ公女が2006年にニューヨークを訪問しAIDS感染者で路上生活をしている方に包括的な支援を行っている施設を視察した際、同じような施設を立ち上げたいと思い立ち、寄附などにより設立しました。2010年のオープン以来累計1200人が滞在(2018年時点)し、こうした施設はヨーロッパではここだけです。特徴的な点として、滞在者が作成したアート品がオークションにかけられ、それを篤志家が落札し、施設に品物として寄附していること、また運営資金も篤志家の寄付や支援財団の基金等、寄付のみで活動していることが挙げられます。メゾンドヴィには2011年よりソシオエステティシャンが就労しており、滞在者にトリートメントを行ったりワークショップを実施したりしています。